アリエナイ医学事典がアマゾンで販売停止されたのは鳥取県が悪いのか?

   

鳥取県の有害図書指定がちょっと波紋をよんでいましたね。
問題になっているのは以下の改正部分と思われます。

鳥取県の有害図書に指定されるとネット販売も禁止される

https://www.pref.tottori.lg.jp/240262.htm

「鳥取での販売がもはやリスク」──県の有害図書指定でAmazonから排除 三才ブックスが抗議のPDF公開

鳥取県の条例ですが、ネットでの販売規制についてはその業者の所在地は関係なく適用されます。
もっとも、鳥取県内の成人に販売することはできるので、この点は既存の業者などと大差ない規制であり、これまでの憲法訴訟などからみても問題なさそうですが、上記の記事にもあるようにそう単純ではないようです。
当該鳥取県も三才ブックスさんとのやり取りをみてもそこまで想定していなかった可能性もありますね。

ネットでの販売規制は合憲の可能性が高い?

青少年育成条例による有害図書指定で自動販売機での販売規制が問題となった事案での最高裁判決

何が有害にあたるかどうかではなく、有害図書と指定された場合に成人も少なからずその影響を受けてしまう点が問題の本質であり、ネットでの販売を一律規制するのは要するに規制方法、手段としてどうなんだ?という点が問題となります。
参考になるのは以下の記事にある検察官の反論部分です。
https://www.agaroot.jp/wp-content/uploads/2018/09/18siho_hanreihyakusen_kenpou018.pdf
有害図書として18歳未満の者に販売を規制すること自体の目的は正当だとされる可能性が高く、この点を問題にしても到底勝ち目はなさそう。ただ、規制手段はどうか?目的と合理的関連があればよいという主張を検察官はしています。
最高裁の判決文では
「成人に対する関係においても、有害図書の流通を幾分制約することにはなるものの、青少年の健全な育成を阻害する有害環境を浄化するための規制に伴う必要やむをえない制約であるから、憲法二一条一項に違反するものではない。」
としています。この事案は自動販売機で購入することが全面的にできなくなりますが、それでも構わんよという事になります。書店で対面で買えばよかろうもんということでしょう。
そうするとネットなどの通販で買うことも全面的禁止することも何ら問題ないと判断されると思われます。もっともネット上で全面的に販売禁止となればこれは他県在住の人にまで制約が及んでしまい、必要やむをえない制約とは言えなくなります。

成人および他県在住者への販売まで禁止するものではない

が、他県の人への販売はやろうと思えばできます。技術上の問題なのか、コストの問題なのか、いずれにしろ全面的に販売を停止するのは内部的な問題でしょ?と言われてしまう事が想定されますね。
ただ、わずか数冊の本でその販売部数もたかが知れているもののために、もしも数百億のコストがかかる、とかなったらやはり販売停止したほうがよい、となるのも分かります。

ネットでの販売を規制しなければザル法となる

アマゾンで販売されないということは今の時代死活問題と言えますが、結論から言うとアマゾンの怠慢と言えるのではないでしょうか?
確かに当該指定図書の販売の際にイチイチ住所と年齢でフィルタリングして販売するかしないかを決定するのはメンドクサイというかシステムを改修する必要があるかもしれませんし、それ相応の時間と費用がかかるかもしれません。なのでそんな事するくらいなら取り扱わない方が手っ取り早いとなるのも分かります。もしも、簡単にできるのにやらないのであればそれこそ問題でしょう。
他の業者さんはまだ取り扱ってますし、今後もこのような事案はどんどん出てくるでしょう。なんせ日本全国の各自治体がそれぞれ100冊指定するだけで相当な数にのぼります。
いずれにしろ、天下のアマゾンさんができないわけがない。
むしろ、これだけの超巨大企業に成長した今、表現の自由という観点から社会的責任もあるのではないかと思ったりしましたが。

アマゾンさんって元々本のネット通販で創業したという経緯もあって、もっと表現の自由などに対して気骨のある企業風土かと思っていましたが、単なるビジネスの一手段として本を使っていただけのようですね。
まあ、そんなもんでしょうね。

鳥取県青少年育成条例




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