インボイス まとめ

   

これまで
売り上げ100万消費税10万  仕入れ50万消費税5万
仕入れ時に支払った5万円を控除し、実質5万円納付すればよい

これから
5万を控除するにはその仕入れ先がインボイスを発行している必要がある。インボイスを発行するには課税事業者になる必要がある

要するに、これまで免税事業者であったにもかかわらず消費税分を上乗せして徴収していた事業者が、これからは上乗せできなくなるかもしれんということらしい

それの何が問題かと言う人もいるはずだ。確かに言わばこれは便乗値上げと同じで税のシステムにタダ乗りしていただけなのであるが、当該事業者に言わせれば事実上その分の売り上げが減ることを意味する。
それは死活問題だ、ということらしい。普通に考えると免税とかやめればよくね?となるし、そもそも個人を取引相手にしていたらあまり影響はないだろう。もともと事実上消費税をとっていない個人事業主のような人もいるかもしれない。

消費税抜きで販売しても怒られないのか?

ここで素朴な疑問が
消費税って徴収したりしないとか勝手にできるものなのか。言い換えると消費税は税金なんだから必ず納付する必要があり、だとすると商品やサービスを提供する事業者は必ず請求する必要があるのか?ということである。

消費税は預り金ではない!」インボイス絡みで声高主張されるも…やはり「消費税は預り金である」【税理士が解説】

東京地裁で平成2年3月26日に出た判決を根拠に、「消費税は預り金ではないことが判例で確定した」と言っている人が多いことがわかりました。

そこでその判例をTAINSという判例が検索できるシステムで検索してみたのですが、判決の内容を見ても「消費税は預り金ではない」なんて言葉は一言も出てきません

消費税の納税義務者は消費者ではない

この人何が言いたいのかと言うと要するに判決文には預り金ではないという言葉が一言も出てきていないから「預り金ではないとは言えない→預り金である」と言いたいようです。論理学的に言うと既に破綻したロジックなので言及するだけ無駄なのですが(笑)、預り金か預り金でないかの本質は、税の負担者が誰なのか?という点で、そこがもっとも重要ですよね。
ここで前述の疑問とつながってきます。
結論から言うと、消費税の納税義務者は消費者ではなくその商品を売った事業者になるそうです。
つまり、消費税というよりは売上税と言ったほうが適切なようで、言わばその売上税分を上乗せして消費者に請求しているだけということです。
確かにこれを事実上預り金とする見方もできますが、
逆に言えば消費税として徴収しなくても売り上げに対して消費税を納める必要があるので預かっていなくても消費税は納めなくてはいけません。
預っていないのになぜ収める必要があるのかという反論が預り金説には成り立つでしょう。消費者からお金を徴収した時は預り金だけど、消費税をとらなかった場合は、事業者に納税義務があるから消費税はやはり収める必要があるというのは少し厳しい見解じゃないでしょうか。

仕入れ税額控除は必要なのか

つまりある商品が売れて消費税〇〇円を支払ってもらったからその〇〇円を収めるというわけではない。
商品が〇〇〇円売れたのだから、〇〇円を消費税として納付するわけです。
そう考えると、現在の仕入れ税額控除も消費税を仕入れ先に実際支払ったからそれを控除するわけではなく言わばみなし額を控除しているに過ぎない。
このように考えると、売り上げに対して消費税を納付するのですから仕入れ税額を控除するという考え方自体実はおかしいのではないかという考えも成り立ちます(実質的に消費税分を上乗せされていたとしても、もはやそれがその商品の価格であり、消費税の負担者はあくまで商品やサービスの提供側である)。

ガソリン税が二重課税ではないとするならば

これはガソリン税の二重課税の問題と類似しています。

ガソリン税は二重課税ではないという理屈
●ガソリン税と石油税の納税義務者は、石油会社である。
●消費税はガソリンを購入した消費者が納めるもの
ガソリン税に消費税、二重課税ではないのか?

納税負担者が違うからというのが理論的根拠のようですが、既にみたように消費税を納めるのは消費者ではないですよね。
また、いずれにしろ二重課税でないとするなら、消費税の仕入れ税額控除も消費税の二重払いにあたらないという理屈も成り立ちますね。当該消費税の納税義務者は仕入れ先ですから。
そもそもガソリン税の二重課税の論点は税金に税金がかかっているのではないかという話ですが、消費税は預り金ではないとする考え方からすれば、消費税を負担するのはそのガソリンを売ったスタンドなり販売店ですから消費者が二重課税されているわけではないとなります。
しかし、そうするとレシートに消費税としてガソリン税などを含んだ金額が表示されているのはどうなんだとなります。
実際のところ税務署がスタンドに対して消費税を課す時にガソリン税や石油税なども含んだ金額を売り上げとして課税しているのか否かという話になり、もしそうだとすると確かに二重課税と言えるでしょう。そこでその分控除なり還付されるのか?ということで税理士でもないのでそこまでわかりませんし本題から外れるので話をもとに戻そう。

消費税を含んだ金額が正規の値段ではないのか?

仮に免税事業者がある取引先に100万円分の商品を売っていたとして、それに消費税が含まれていようがいまいが10万円の仕入れ税額控除を使っているでしょう。
そして今後その免税事業者がインボイスを発行しなかったとしたら10万円の税額控除は受けられない。
なので90万円に値下げしろと。一見理にかなっているように見えますが、そもそもその免税事業者は消費税をとっているつもりはない場合だってあるはずです。単に売り上げにかかる税金を免除されていただけだと。

消費税は預り金ではないとすると消費税分上乗せされた金額を仕入れ先に支払ってもそれは消費税ではないと考えることもできます。要するに消費税分を上乗せされた金額が正規の商品の値段だと。

例えば、インボイス導入後も免税事業者のままの仕入れ先には仮に10%減額された金額を支払うとすると確かに消費税分減額されているように見えますが、消費税は預り金ではないとすると、その10%減額された金額が正規の価格となり、免税事業者でなければそこに10%の消費税がかかってくるのでそれを収めることになります。
分かりやすく言えば、免税事業者と課税事業者から同じ商品を消費税分込みの同じ価格で仕入れた場合、仕入れた企業は課税事業者から仕入れた分にかかる消費税を控除し、免税事業者の分は控除できないので実質的に課税事業者から安値で仕入れていることになります。そうすると確かにインボイス導入により国は課税事業者が増えれば税収は増えるかもしれませんが、商品やサービスへの下方圧力がかかりますよね。

インボイス発行の課税事業者が消費税を請求してこなかったら?

他方、仮に課税事業者が消費税分を上乗せせずに請求してきたら、いくら課税事業者でも消費税預かり金説からは仕入れ税額控除を受けられないとも言えそうですがこの場合どうなるのでしょうか。仮にそれでも仕入れ税額控除が受けられるのならそれは支払った金額に対してでしょうから、結局それだけの消費税を支払ったとみなしているだけでしょう。いずれにしろ消費税として実際に受け取った額が納付されるわけではないのに変わらない。
逆に控除を受けられないのなら、それこそ消費税は預り金ではないとは言えないようになってしまいますね(消費税の負担者が消費者だから)

インボイス制度の導入によって事実上増税になる、というのはそうかもしれません。仮にそれが政府の目的とするならば免税措置をやめたほうが話が早いでしょう。




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