ウェイソンの4枚のカード問題 備忘録

      2021/12/27

高校数学も分からないチンピラの落書きですから華麗にスルーしてください。
 

4枚のカードがあり、それぞれ片面にはアルファベットが、もう片面には数字が書かれている。
A,K,4,7が見えている状態である。(ここまでは確認済みとする。)
このとき、「片面が母音ならば、そのカードのもう一方の面は偶数でなければならない」というルールが成立しているかどうかを調べたい。
4枚カード問題(ウェイソン選択課題)

※以前書いていた記事を読みなおし、再度検証した結果を新たに追記しておきます。
〇問題としてルールが成立しているか?という場合と仮説が正しいかという場合がある
〇確認する必要があるカードと、最小限という限定がつけられている場合がある
 
4枚のカードでルールが成立しているかどうかを確認するには結局4枚全部を調べる必要があるのではないか?という素朴な疑問がまず沸き上がる。
そうなると必要なカードとか最小限とか言ってもそれには意味がないことになる。
この問題の正答はAと7であり、ほとんどの人がAと4と答えるという。仮にKの裏にあが書いてあったとしたらルールから逸脱しているようにも思えるがこの問題ではルールからは逸脱していないことになるわけだ。
 
そしてこの答えの正答がAと7であるということは、この問題は論理問題であるという事である。また論理問題として解くと正答が分かるのに人はなぜこの問題を間違いやすいのかというのがこの問題の本質らしい。
ウェイソンの4枚カード問題を検索するとまず1番目にヒットしたこの記事4枚カード問題(ウェイソン選択課題)にはこう記載されている。

〇この問題の主題は論理学での正解が何かではありません。解答の偏りについて考察することが主題です。
〇(問題には最小限の枚数とは書いていないので、Aと7を含めていれば正解としてよいと思います。)
〇「A」「4」とする解答がよく見受けられます。 「4」のカードを調べても、条件を満たすことを確認するだけです。

問題文を改めて確認すると、「ルールが成立しているか」であるが、この意味そのものが一体どういう意味なのか?仮にルールから逸脱していたらルールは成立していないという風に捉えていいと思うが、4の裏を確認する事は条件を満たす事を確認する事ではなく、論理学的に言えば意味のない事をしている→4の裏が仮に母音だとしてもルールが成立しているとは言えないから4を確認することは正答ではないという事だと思われる。
この問題の本質は正答を導き出す事ではなく答えがなぜ偏るか?という事だと一般的に言われているが、言い換えると正答はAと7なのになぜ人はAと4を選ぶのか?という事であり、Aと7が論理学的に言うと正解なのになぜ人は論理的に思考しないのか?という事でもある。
論理学を多少かじった人ならすぐに正答にたどりつくだろうが、そうでない人はなぜかAと4を選びがち。なぜ7ではなく4か?ではなく、なぜAは選ぶのに7は選ばないのか?だろう。

 
 
また、仮説が正しいかどうかと問われるとまた違った印象になり、仮説が正しいかどうか確認するにはどのカードをめくればもっとも効率よく確認できるか?という質問の仕方だとかなり正答率は上がるはずである。
ほとんどの人がこの場合まず最初にAをめくるはずである。そもそもがAと4を選ぶ人が多いのだから当然である。次に選ぶのが多いのはやはり4に違いないが、ルールが成立しているかと問われると4枚全体でのルールと考える人がほとんどだろう。しかし、ある仮説が正しいかどうかを確認するには別に全部を調べる必要はないからである。
また、この問題表と裏という表現と片面という表現があるのも混乱のもとになっているようだ。
表と裏だとどっちが表か分からない。
逆に片面という表現だとそもそもどっちがまず先にくるのか分からない。論理学では母音→偶数という流れがあるが片面という表現だと⇔このように思ってしまうからである。
この問題この辺りをあまり認識せずに試験問題として出されるときがあるが、かなり問題がある事が分かる。
ざっくりと問題として設定されると論理学で言えば簡単だとも言えないからである。
平成25年の司法試験予備試験の問題にこういうものがあった。

https://www.moj.go.jp/content/000111049.pdf
〔第10問〕
表(片面)には P か ¬P のどちらかが,その裏(もう片面)には Q か ¬Q のどちらかが書
かれているカードがあって,その中から 4 枚を選んで,以下のように並べる。
< 1 枚目> < 2 枚目> < 3 枚目> < 4 枚目>
  P       ¬P     Q     ¬Q
1 枚目のカードの裏は,Q かもしれないし ¬Q かもしれない。2 枚目のカードの裏も,Q かも
しれないし ¬Q かもしれない。3 枚目のカードの裏は,P かもしれないし,¬P かもしれない。
4 枚目のカードの裏も,P かもしれないし,¬P かもしれない。
さて,この 4 枚のカードの中に,「P のカードは裏返すと Q である」という条件に反するカー
ドがあるかどうかを調べたいとする。できるだけ少ない枚数をめくって,その条件に反するカー
ドを見付け出すためには,最低限何枚どのカードをめくればよいか。正しいものを,次の1から
5までの中から選びなさい。(解答欄は,[№10])
1.P と書かれたカードを 1 枚だけめくって,確かめればよい。
2.P と ¬Q と書かれたカードの 2 枚をめくって,確かめればよい。
3.P と Q と書かれたカードの 2 枚をめくって,確かめればよい。
4.P と ¬P と Q と書かれたカードの 3 枚をめくって,確かめればよい。
5.P と Q と ¬Q と書かれたカードの 3 枚をめくって,確かめればよい。

 

法務省の解答は2である。
まず問題設定として論理学の問題などという断りがないが、大学一般教養の問題であり大学生ならこれは論理学の問題だなと見当がつく人が多い問題の出し方をしている。
さらにルールではなく条件という表現であり、かつ正しいかどうかではなく「条件に反する」カードを調べるとなっている。
また、できるだけ少ない枚数ともなっている。もし、正しいかどうかとなると結局全部か?と混乱しがちである。なぜならこの問題決して論理学での正答とはなっていないからである。
よく見ると、表面とか片面とかという表記になっていて、この辺り敢えて論理問題かどうか判別しにくくしているとも言えるかもしれない。
「1.P と書かれたカードを 1 枚だけめくって,確かめればよい。」は正答ではありませんがなぜ正答ではないのでしょうか?
もし論理学で言うところの間違っているかどうかであれば仮にPの裏に¬Qがあればその時点でアウトになるのでこの1枚だけで条件に反するカードがある事が分かります。
しかし、仮にこのカードの裏がQであれば更に他のカードをめくる必要があります。
 
問題がルールが成立するかどうかを確認するとなっている場合も確認する必要はあるので当該カードをめくる必要はありますが、さらに他のカードも確認する必要はありますね。
 
しかし、問題は条件に反するカードがあるか確認するとなっているので1だけでも判断できる場合があることになります。
正答はPと¬Qの2枚を確かめればよいとなっているので次に¬Qをめくります。仮にPが書いてあると条件に反します。また¬P であったとしても条件に反しそうですが、¬¬Pについての片面については何の条件もありません。
 
では他のカードは確認する必要がないのでしょうか?正答としてはここで打ち止めになっています。
残りの2枚目のカード¬P をめくったらQが出てきたとしたら条件に反するでしょうか?Pの裏がQという条件なのでQを裏返すとPになるはずなので条件に反しているとなりそうですが、問題文には「表(片面)には P か ¬P のどちらかが,その裏(もう片面)には Q か ¬Q のどちらかが」書いてあり。また「2 枚目のカードの裏も,Q かも
しれないし ¬Q かもしれない」となっているので「Qを裏返すとPになるはず」という発想は出てこない人が大半だと思います。という事から¬Pをめくっても条件に反するかどうかは何も言えないとなります。
最後に残った3枚目のカードQはどうでしょうか。
Qの裏がPだとすると条件に合致していますが、¬Pだと条件に反しそうです。条件はPの裏がQなのでQの裏もPであるべきと考えがちです。表がPで裏がQという条件だとすると通常の間隔だと表裏一体なのでやはりルール的には間違っていると言えそうです。しかし、ルールではなくPを裏返すとQという条件であり、また「3 枚目のカードの裏は,P かもしれないし,¬P かもしれない。」という断りが入れてあるので、Qを裏返すとPになるというのが条件という発想は出てきにくいと思われます。
いずれにしてもQを裏返しても条件に反するかどうかは判別不能ということになります。
 
そうすると、Pと¬QをめくってもPが条件に合致し、¬Qが判別不能の場合があることになりますね。ここにちょっとふわっとした腑に落ちない感覚が残りますが、残りのカードはめくっても意味がないので条件に合致しているかどうかを確認するにはPと¬Qの2枚になります。
 

従ってこの問題、論理学のみで解いてしまうと意外に足元をすくわれてしまうかもしれません。

この問題から分かった事はウェイソンの4枚カード問題の出題の仕方として適切なのはルールや条件など言い方は色々あれど、それを確認するために不要なカードはどれかということになる。なぜなら必要なカードをめくっても判別不能が出てくるからであり、判別不能もルール成立、あるいは条件合致になるとしなければならない。
その意味でこの問題の設定のように条件に反するかどうかにすれば、判別不能は確かに条件に反してはいないので理にかなっている。
~追記ここまで

カードの表と裏は一対である

認知心理学などでもこの問題はよく取り上げられるそうだ。
単純な論理問題だと簡単なのに、なぜカード問題として出題されると間違う人が多いのかということらしい。
これも実は簡単な話である。
カードは表裏一体、表があれば裏があり、裏があれば表がある表と裏は一対である。
母音の裏が偶数というルールが成立しているときは、偶数の裏は必ず母音である。
偶数のうらが子音だとルールから逸脱している。
しかし、この問題では確認のために偶数を見ても意味はないという答えである。
勿論論理学を多少かじっている人ならすぐに理解できる、
母音→偶数
という命題が成立している場合であっても偶数→子音であっても構わないわけである。だから偶数のカードを確認してもルールが成立しているかは分からない。

 

しかし、

カードを作る仕事を与えられたとします。条件は表に母音を書いたらその裏は偶数を書く。これだけです。

さて、作業を始めて偶数の反対側に子音が書いてあるカードを発見。

論理学ではルール違反にならないのに現実社会ではルール違反になる不思議

当然これは条件に合致していない不良品ですよね。しかし、ウェイソンのカード問題であればルール違反にはなりません。

母音の裏が偶数なら、偶数の裏も母音でなければカードを作る仕事としては成り立たないわけで
母音の裏が偶数と言われたら、偶数の裏も母音という事を含んでいるわけです。

これは条件というよりは、カードの表裏という物理的なものを考えた時、人間の普通の感覚だとそう判断するということなのでしょう。

しかし、単純な論理問題としてとらえると
母音→偶数 の対偶 奇数→子音 が成立するので ルールが成立しているかどうかを確認するには偶数を確認しても意味はない、となってしまいます。

論理問題は結構こういったひっかけに近いものが多いようだ。

 

スミス氏の息子問題

スミス氏には2人の子供がいる。
偶然スミス氏に会い、これは私の息子だと紹介してくれた。
もう一人の子供が男の子の確率は?
という問題もよく取り上げられるが、これも少々いやらしい問題である。
ここで往々にして3/1という人とと2/1という人に分かれるだろう。
なぜ別れるかというと、子供が2人という組み合わせでの確率を考える人とそうではなく単に性別だけで判断する人がいるからだ。
従ってこの問題の正解をベイズの定理などを使って2/1と言い切ってしまっている人は実は問題の本質を分かっていないと思う。
一体何を母数とか分母にするか、その条件がはっきりしていないのが、こういった問題のミソだろう。




 - 素朴な疑問