海外のサーバーだからと言って安心できなかった話

      2022/08/03

村西とおるさんの事をググっていたら、なぜかカリビアンコムに出演していた女優さんや男優さんがわいせつ電磁的記録媒体送信頒布の幇助とやらで逮捕されていた事を知りました。ん?だめですのん?だってカリビアンコムとか有名ですやん。
サーバーは海外でしょう?

カリビアンコムに無修正動画を配信して逮捕。「海外サーバーなら合法」説はもはや通用しない?

記事によれば2015年の判例によって変わったとある。ということでさらにググる。

刑事判例研究17 海外に設置されたサーバ上の配信サイトにわいせつ 動画等のデータをアップロードし,日本人顧客に ダウンロードさせた行為と刑法175条⚑項後段に いうわいせつな電磁的記録の頒布

めっちゃ長いけど読みました。逆説的に言うと、今まで海外のサーバーだったら摘発できなかったのに今後は摘発できるようになったのはなぜかって事ですなんですが、改正された刑法175条1項後段を適用したからみたいですね。

(公然わいせつ)
第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
(わいせつ物頒布等)
第百七十五条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

以前もサーバーに猥褻動画とか保存してダウンロードできるようにしているだけで公然わいせつ物陳列罪が適用されていたみたいですが、この場合サーバーが国内にある場合は問題なく有罪にできるが、海外のサーバーの場合は問題だったようです。逮捕しても多分起訴まで至っていないか、判例も分かれていたんじゃないですかね。
そもそもカリビアンコムの事案は175条1項前段の公然わいせつ物陳列罪ではなく後段のわいせつ電磁的記録媒体送信頒布罪で検挙されてます。
要するに実行行為の一部が国内で行われ、かつその犯罪の結果(ダウンロード)などの行為も日本国内で行われているのでサーバーがどこにあろうが関係ないということで、その理屈は理解できました。
そうすると、当局の検挙を免れるためにはサーバーへのアップロード行為を日本国外で行えば良さそうです。
撮影して記録した媒体を日本国外に持ち出すのも難しそうなので結局撮影も日本国外で行うことになりそうですが。
とは言え、今の時代インターネットで瞬時に世界とつながることができますから、安易に国内犯を認めてしまうと逆の場合も想定されかねませんよね。日本人が国外の法律で検挙されたりしても何も文句言えないとかなったら洒落にならないから敢えてカリビアンコムの事案でも国外に在住している共犯者は検挙していませんね。(ていうか逮捕したくてもできないでしょうけど)
しっかしただアソコが映っているだけで猥褻で、映ってなきゃ猥褻ではないって、そんなおかしな考え方で一般庶民の自由な性文化を抑圧しまくってなんの得があるのだろうか。。

オンラインカジノも海外の会社だからいいやって思って賭けまくっていたら、ある朝早く逮捕状をもった刑事さんたちがインターホンを鳴らすかもしれませんよ。

※追記

国外のサーバーだと公然わいせつで検挙されないというのはミスリードだったことに気付く

刑法⚑条⚑項は,国内犯について属地主義を採用しており,「犯罪地」
の決定に関しては,構成要件該当事実の一部が日本国内で発生すれば日本
を犯罪地とする遍在説が判例・通説とされている

本決定が,顧客によるわいせつ動画等のダウンロード行為を,
被告人による「電気通信の送信による頒布」とみなしたのであれば,実行
行為が日本国内において行われており,また,日本の顧客の記録媒体に当
該データが存在するに至ったのであるから,構成要件的結果も日本国内に
おいて生じていると言える

実行行為の一部が行われていれば検挙可能

サーバー内に猥褻データがある場合、サーバー自体を猥褻物として公然わいせつ物陳列罪を適用していたようですが、上記の理から言えば、仮に国外のサーバーであっても実行行為の一部が国内で行われていれば検挙できそうですね。
もっとも、国内で撮影したデータを国外のサーバーにアップロードする事自体が陳列罪にあたるとするためには撮影そのものあるいは送信行為が陳列罪の実行行為の一部としなければならないので裁判所がどう認定するかによるとも言えますが。
もっとも裁判所は端的にネットで不特定多数に配信、またはダウンロードさせる目的で撮影している事を総合的に判断して公然わいせつとして認定しているようです。

無修正動画の配信の摘発は公然わいせつで可能

わいせつ電磁的記録記録媒体陳列,公然わいせつ被告事件 令和3年2月1日
そして、サーバーというかその配信をしている会社の経営者は幇助どころか共同正犯となっています。
従って国外にサーバーがあるから問題ないというのはある種都市伝説ですね。
上記事件は175条1項前段適用ですから改正云々は関係ないようです。そもそも後段は電子メールで送信するような場合にどうするのか?という観点からの改正だったもよう。

無修正動画配信の摘発が多くなったことと法改正は直接関係ない

法改正は関係なくこれまでも撮影者や配信者は検挙される可能性はあったわけで、配信している業者さん自体の検挙立件は国外の場合は難しいというのは今後も変わらないでしょう。
FC2の関連会社の代表などが検挙されたのは、サーバーが国外にあり、会社の登記も国外だとしても、サイト自体を作成運営しているのが国内ならば検挙されてしまうのは当然ですよね。
これは法改正とは無関係の話だと思われます。




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