性風俗従事者に持続化給付金を支給しない事は職業差別にあたるのかあたらないのか問題

   

性風俗業者を給付金対象から除外、東京地裁「合憲」…「国庫での下支えは相当ではない」
国が「公金で性風俗業を下支えすることは、多くの国民が抱く性的な道義心に照らして相当ではない」と判断して給付対象から除外したことには、合理的な根拠があるとした。

ということで、東京地裁は職業差別にはあたらない、という結論でした。
コメントを見ると概ねこの判決には賛成の方が多い印象です。
その根拠としてもっとも多いのは税金の申告なんかちゃんとやってないでしょ?というものです。
この判決は職業で支給する支給しないを区別するのはおかしいのではないか?という観点であり、職業で区別しても合理的な理由があれば許されるというものですから税金は何の関係もないようです(判決文の全文が分からないのでなんとも言えませんが)。
もし、納税が関係するとすれば納税を行っているかいないかで支給するかしないかを区別すればいいだけですから、性風俗に従事している人は納税をきちんと行っていないだろう、多分、いや絶対に、という物凄い色眼鏡で見ていることになりますね。
この論法だと税金納めている性風俗従事者には持続化給付金は支給すべし、という事になりそうですが。

思うに、性風俗であってもきちんと許可をとって営業しているところがほとんどでしょう。つまりお上が許可を与えて営業しているわけで言わばお上公認なわけです。
にもかかわらず、税金は徴収するが通常は貰えるはずのものでも貰えない場合がある。
この裁判所の理屈だと、例えば児童手当とかも性風俗従事者は支給しないとすることも許されることになりかねないですよね。勿論、そんな事は許されそうにないですが、じゃあなぜ子供手当は支給するのに持続化給付金は支給しないのか?
その根拠を裁判所は「公金で性風俗業を下支えすることは、多くの国民が抱く性的な道義心に照らして相当ではない」としているわけです。
つまり、持続化給付金というものの位置づけがその産業を下支えするためのものというもののようです。
実際に制度の概要には

感染症拡大により、特に大きな影響を受けている事業者に対して、事業の継続を支え、再起の糧となる、事業全般に広く使える、給付金を支給する制度です。
農業、漁業、製造業、飲食業、小売業、作家・俳優業など幅広い業種で、法人・個人の方が対象となります。

とあります。要するにコロナの影響で売り上げが減少した場合に事業に使える資金を給付するという建前ですね。
では給付の対象外の業種というのはどういうものがあるのでしょうか?
性風俗以外では政治団体や宗教団体が挙げられており、他に明確にこの業種はダメというのは挙げられていません。https://heartland-tax.com/media/fund/jizokuka/

政治団体とか宗教団体が売上というのもの変なのでわざわざ列挙する必要があるのかというのは置いておき、なぜ性風俗は対象外なのか?その理由については分かりません。
恐らく、性風俗に税金まで投入して存続させようとするのは国民の理解が得られない、と判断したのだろうと推測。
確かにそう言われればそうですよね。なんだか変な話です。
だとするならばなぜ許可制にしてまで性風俗の営業を許しているのか。いっそのこと禁止にすればいいのではないかとも思うわけです。
とは言え、その事と性風俗従事者などに持続化給付金を支給しない事とはまた話が別ですね。

最初はこれって職業差別ではないか?と正直思ったのですが、基本的に裁判所は合理的な差別、区別は許されるというスタンスらしいので、差別かもしれないけど持続化給付金の目的から考えると確かに支給するのが逆におかしくね?という見方もできるので合理的な理由があって支給しないのは許される、となりそうです。

しかし、これは地裁レベルの話なので高裁でひっくり返る可能性も充分あります。
そもそもコロナという未曽有の感染症に国民一丸となって対処しようとする施策の一つであり、大きな目的では国民の生命と安全の為と言ってもいいわけで、事業を下支えするだけではない、とも言えるかもしれません。
ここらへん弁護士さんの戦略でかなり変わってくるかもしれませんね。

裁判所の人もお世話になった方がたくさんいそうなもんですが、世知辛い世の中ですね(笑)




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