ブラックマンデーの原因と言われるポートフォリオインシュアランス

      2023/07/02

ポートフォリオインシュアランスという投資手法があります。
どんなものか調べていたら
知っておきたい、現代金融史 ― (25)ブラックマンデーとポートフォリオ・インシュアランス

システム売買悪玉論や、先物売買悪玉論、空売り悪玉論など株価が下がる時には何かをスケープゴートにしたがりますが。
さて、ポートフォリオインシュアランスには大きく分けて2種類あるそうな。
https://www.jpx.co.jp/derivatives/futures-options-report/archives/nlsgeu0000021z7t-att/rerk9208_02.pdf

ブラックショールズを使った複雑な計算を伴うタイプと先物を使うタイプ。
いずれにしろ、ポートフォリオ全体の最低損切り価格とも言うべきフロアを設定し、それ以下には損しないようにする。
言い換えればその価格で打ち止めなので、そこから新たに投資する場合はどうするのか問題が残る。
基本は、購入した資産が下がっていくにつれて売却していくので、下がっていくにつれて購入資産はゼロになり確かに一定金額以上の損はしない(株と預金の組み合わせ)。
上昇していく分にはどんどん買い増ししていくという仕組み。
つまり、リスクという観点からみるとあくまでポートフォリオの初期値からどれくらい下落するかというもので、一旦含み益がでてもそれを確保しようという発想はない。どこかで利益確定をしなければならないがそれはどうするのか問題もある。
もし利益確定ラインを設定していなければ延々と持ち続ける。持ち続けるという事は含み益がある可能性もあるが、含み損の可能性もある。微益、あるいは微損でずっと持ち続ける羽目になるかもしれない。
物凄い含み益が出ても、利確という基準を設定していなければ、それが確保できずに翌年は大きく下落して、プラマイゼロくらいになっているかもしれない。
長期投資という観点からは別にこれでいいとも言える。流行の(流行っていた?)S&P500などへのインデックス投資をする場合は数十年というスパンなのでこれでいいのかもしれないと思いつつ、結局持ち続けていると含み益が増大し、すでにヘッジもなくなっていて、そうなるとこの手法がモノを言うのは投資し始めた最初らへんだけではなかろうか。

ということで、一見おいしい戦略のように見えて、頭のいい人が思考実験のみで構築した現代経済学にありがちな理論なのかもしれない。
とは言え、この考え方を応用して、やり方によってはメリットを享受し、デメリットを軽減する事ができるかもしれない。

クッションとか乗数ってナンだ?
https://www.orsj.or.jp/~archive/pdf/bul/Vol.34_01_036.pdf?utm_source=pocket_mylist
ヘッジ額=証券価格-乗数(証券価格-フロア)

ポートフォリオの価格 1億円 損失を10%にとどめたい フロア9000万 差額1000万がクッションと呼ぶ
先物ヘッジ比率を決定 1億円に対して50%なら5000万

これで乗数が決定される
5000万=1億円-乗数(1億-9000万) 乗数5

ポートフォリオ価格5%下落 9500万
ヘッジ額=9500万-5(9500万-9000万) ヘッジ額7000万

株と先物の組み合わせの場合は下落した場合は株を売らずに先物ヘッジ比率をあげるようだ。
株と預金の組み合わせの場合はポートフォリオに預金も含んでいるので考え方が少し異なるようである。
https://www.jpx.co.jp/derivatives/futures-options-report/archives/nlsgeu0000021z7t-att/rerk9208_02.pdf?utm_source=pocket_mylist
CPPIでは,まず資金額が決まった時,株式と現金にどのように資金を配分するかをフロアと乗数とを決めることにより決定する。どのように決定するかと言うと,常に

クッション×乗数=株式エクスポージャ 

となるように調整する

従って株価が下落するとポートフォリオ全体の額も減少し、クッションの額も減少する。
乗数は一定なので必然的に株の保有額を減らさなければならない。
フロアを下回るような下落になるとクッションがゼロになるので株の保有額もゼロとなる。

先物を使う場合はフロアを下回っていくと、先物ヘッジ総額がポートフォリオ(株式)の時価を上回る。
ヘッジを細かく行わなかったとすると、
このとき、先物ヘッジによる含み益は初期のヘッジで+500万となっている。フロアを下回るのでここで決済となり、損失は500万で済む。
仮に5%下落し、先物ヘッジを追加した後に上昇に転じた場合はどうなるか。
①5000万=1億円-乗数(1億-9000万) 追加ヘッジ2000万*5%=100万の損
9500万-5(9500万-9000万)=7000万 ヘッジを2000万増やす このとき初期ヘッジで+250万なのでトータル-250万
② 1億500万-5(1億500万-9000万)=ヘッジを3000万に減らす 初期ヘッジ5000万のうち2000万を損切り=100万の損と含み損150万 追加ヘッジ2000万は1億まで価格がもどったときに損切り-100万

相場が上昇していく場合にはヘッジがいつかゼロとなるので、含み益に対するヘッジはない。

よくよく考えてみると、先物ヘッジの場合の乗数の決め方は購入する株に対してのヘッジ割合で決めている。これを先物ヘッジも含めたポートフォリオ総額としてみたら、乗数は下がる。

預金を先物に代えたらどうなるだろうか。つまり相場が下がっていくと株式はゼロになり全て先物に置き換わるということである。そうすると相場が下がり続けると利益が増大していくことになる。本当にそうだろうか。
仮に株式がゼロになって相場が反転上昇を始めたとする。株式がゼロになった時点では株の損失が積みあがっている。
そして、上昇し始めると追加でヘッジ売りした先物に今度は損失が発生しはじめる。
否、下落していく過程で株を売却するので先物ヘッジを追加する必要はないか。株売却は全て現金に置き換わる。
いずれにしろそこから相場が反転上昇すると先物含み益は減少をし始める。株を購入し始めるのか?先物ヘッジは追加するのか減少させるのかそのままなのか。ということでうまくいかなそうである。

先物ヘッジで相場がフロアを下回った場合
5%刻みでヘッジを追加した場合
8000万-5(8000万-9000万)=ヘッジ額1億3000万 初期ヘッジ額5000万×20%=1000万 追加ヘッジ2000万×15%=300万
2000万×10%=200万 2000万×5%=100万 先物ヘッジ含み益1600万

先物ヘッジの場合、株式がフロアを下回っても先物ヘッジの含み益があるので全体としての損益では下回っていないということになる。

と、ここまできて思う。
これ、デルタヘッジに似ているな。だからブラックショールズとかでてくるんだな。
オプション売りのデルタヘッジのほうがよっぽど簡単だが、利益は伸ばせない。
逆にオプション買いのデルタヘッジのほうが利益が伸ばせることもある。
ヘッジという意味と、利益をだすという意味ではまったく違ってくるのがややこしい。

ポートフォリオインシュアランスは言わば損失限定利益無限大のコールオプションを買っているようなものだなと、強引にまとめてしまおう。

※コールを買う、或いは現物+プット買い、プロテクティブプットのようなものであるという説明があった(笑)




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