エルサルバドルのビットコイン法定通貨は意外にうまくいったりして

   

ビットコインに価値があるのかないのか議論なんか横目に国家がビットコインを法定通貨にするというニュースでおじさんびっくりです。
ヤフコメ民などの有識者によれば概ねこれだけ変動率の大きいものは通貨としては難しいんじゃないかという意見。ごもっともでございます。
しかし、ここでまず気になるのは法定通貨って結局どういうことなのかと。
ビットコインなどの暗号資産、仮想通貨は別にどこかの国が法定通貨にしなくても自然発生的に流通しているわけで、法定通貨にするということはそれ相応の意味があるのではないか。言い換えれば法定通貨でなくてはできないこととか。

自国の通貨を持たない経済とは

いずれにしても、エルサルバドル自体が自国の通貨を持っておらず、米ドルを通貨にしているので他の国がいきなり法定通貨をビットコインにするという場合とはまったく事情が異なります。
そもそも国民の7割が銀行口座を持っていないということは、多額の現金どころか預金さえも持っていないのでお金貰ったらすぐに使っている状況だと言えるでしょう。

決済手段としてだけ捉える通貨

つまり通貨というものをほぼ決済手段=交換手段としてしか使っていないので使い勝手のいいものであればドルだろうが人民元だろうがなんだっていいわけです。
本来自国通貨を自国の中央銀行がコントロールすることによって金融政策を行ったりするわけですが、エルサルバドルは事実上金融政策というのを放棄していると言えるでしょう。
こうなってくると、アメリカの政策に左右されてしまう米ドルよりもビットコインのほうがよくね?と思うのはなんだか理解できます(短絡的過ぎますが(笑))。
しかも国外からの自国への送金がGDPの20%ほどで、しかも送金した額の20%が手数料で消えてしまうという話です。となると送金手数料激安のビットコインでよくね?となります。

なぜビットコインを法定通貨にするのか

だとしたら別に米ドルからビットコインに法定通貨を変更する必要性はありませんよね。各自、各々そういった暗号資産で送金すればいいだけです。
しかし、例えば米国で不法労働して稼いだドルをビットコインに交換し、祖国の両親に送金した場合祖国の両親たちはそれをエルサルバドルで使うにはドルにやはり交換しなくてはなりません。
だったらいっそのことビットコインを家賃の支払いやらお店で牛乳買ったり、税金払ったりする時にも使えるようにしたらよくね?と考えるのも理解できます。

法定通貨にすると値動きの激しさの影響を受けなくなる

また、米ドルや日本円を他国の通貨に交換するのとは違い、暗号資産はデジタル上で簡単にそしてさほど時間をかけずに交換できるので、ビットコインを貰ってすぐにドルに交換(というよりビットコインを売却してドルを買う)すれば値動きがいかに激しくともさほどそのデメリットを受けることはない。
つまり、あくまで決済手段としてだけ通貨を考えると、通貨をもらってすぐ使うのであれば値動きの激しさというのはあまり関係なくなります。
しかも、これを国内で使う場合に限って言えば値動きの激しさというのは更に関係なくなります。
例えばドルにしろ円にしろ為替レートは刻々変化し、1日で数パーセント動くときだってありますが、日本国内で昨日まで1000円という値札がついていたものが、昨日のレートより1ドル10円も円安になったからといって即値上げになるということはありません。
日本円を日本国内だけで還流させると考えると、長期的には別としてごくごく短期目線で言えば為替レートの変動をもろに受けることがない。

ビットコインの値動きというものを為替レートと考えると確かに一般的な法定通貨に比べると極端に値動きは激しいものの、特定の経済圏の中で決済手段とし使う場合を考えるとあまり気にしなくてもいいのかもしれません。

1国の経済にどのような影響を与えるのか

しかし、これをマクロ経済的にみると1つの国の経済に与える影響がどうなるのかはやはり色々と問題があるように見えます。
まず自国の通貨ではないので金融政策がとりにくい(あ、これは既に放棄されていました)
預金通貨、信用創造などが行えるのかどうか(あ、国民の7割が預金口座持ってませんでした)

一般庶民には使い勝手のいいアプリがあればとりあえず問題なし?

とりあえず、ビットコインを貰ったら即ドルに交換できて、決済するときに自動でドルからビットコインに交換してくれるアプリとかあったら我々底辺の庶民にとってはあまり問題なさそうですね。
決済手段としての通貨はビットコイン
富の蓄積保管手段としては米ドルなど

ビットコインが通貨の地位を獲得していくにつれ資産価値が劣化していく

このように考えていくと、ビットコインが通貨としての位置をどんどん獲得していくと逆に資産として保有する価値が劣化していくのではないかとさえ思えます。
通貨ってやはり経済規模が大きくなっていくとその量も増加せざるを得ないと思いますが、ビットコインって有限でしたよね。一定以上増えない。
それがまた、希少性があるという理由にもなっていましたがどうなんでしょうか。発行量をコントロールできないものを法定通貨にしてしまうと経済発展を阻害してしまうのではないか?

単なる決済手段としての通貨と1国の経済発展の手段としての通貨

減価する貨幣などという理論もありますが、あれは確かに経済をかなり活性化させるかもしれません。使わずに持っておくとどんどん価値がなくなっていくわけですから使った方がいいわけです。となると割を食うのはお金持ち(貨幣を保有し続ける人)になりそうですね。
だからどこの資本主義国家も導入しないのでしょう。いや、お金持ちでなくても将来のためになけなしのお金を貯金しているのにそれだけで貯金が減っていくとなるとどれくらいの人がその制度に賛同して導入するか疑問ですが。貨幣をどんどん動かすということはそれだけモノやサービスが売買されていることになるので経済規模が発展しそうです。そう考えるとビットコインを決済手段にして、貰ったら即使うみたいにすればよくね、というのはやはり短絡的過ぎるでしょう。ビットコインも同じようにすぐ使ったほうがよくなりますが、必ずしも決済に使われるのではなく、単に他の通貨に交換するだけという場合も多いので経済発展に寄与するかどうかは未知数です。

これは結局ビットコインの問題ではなくて、一つの国家の経済を考えた時に通貨がどのような影響を与えるのかという根本的問題であり、いまだに高名な経済学者の間でも喧々諤々の議論のあるところで、もはや低学歴なおじさんの出る幕ではなさそうです(笑)




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