Netflixマンハント引きこもり無職童貞と一発逆転したいプロファイラーの闘い

   

暇だったので仕方なく見てみようとしたところ最初の導入部分で見る事を決めました。
作品の冒頭でこんなナレーションが入ります。

郵便について考えて欲しい。
自己満足した夢遊病の羊のように当然のものと思い込まず、真剣に考えるんだ。
そうすれば間違いなく郵便はしばし思いをめぐらす価値があるものだと分かるだろう。
教室でメモをまわすように大陸を横断する。地球の裏からクッキーを送ることもできる。
箱に宛名をさっと書き、切手を貼り、投函するだけ。これがうまくいくのは間をつなぐ人々が心を持たない機械のように動いているからだ。
住所を書けばその通りに従う。疑問は持たず、道をそれることもなく、永遠や美しさについて立ち止まって考える事もない、死についても。
自由な意思を声高に主張する者でさえ自分の名前の書かれた箱が届いたらやることは一つだ。
従うのみ。
あなたが悪いのではない。
社会がそうしたのだ。あなたは羊だ。住んでいるのは羊の世界。みんな羊なのだ。
従う事しかできない。
私が手をのばせば誰にでもどこにでも届く。手を伸ばして触れる事が出来る、今すぐ。

全米を震撼させた爆弾魔とFBIの遅咲きプロファイラーとの闘いときくとある意味よくある話っぽそうで食指が沸かないかもしれませんね(私の事でしたが)。まったく事前知識がなかったのですが、ユナボマーという名前だけはしっていました。
冒頭のナレーションはユナボマーの言葉なのか検索してみると(郵便で爆弾を送り付けていた)、「産業社会とその未来」という声明文のようなものがあるようです。
全文を見る事はできませんでしたが趣旨としては似たようなことを言っている感じでしょうか。

主人公のプロファイラー(フィッツ)はサム・ワーシントン。

派手なアクションシーンなどもありません。プロファイラーも華々しい活躍をするのではなく、自分の意見をいったところでまったく相手にされないといった感じで現場の捜査官と分析官との確執などが描かれています。

FBIという巨大な組織の中で這いつくばっているフィッツはあたかも爆弾魔ユナボマーが言う組織や社会のシステムに従うしかない従順な羊のようです。

制作者側の意図としてはそういった視点で描いているのでしょう。それがこの作品を羊たちの沈黙的な作品とは一味違ったものにしているようです。

お約束のプロファイラーと犯人が鉄格子越しに対話するといったシーンもあります。ユナボマー=セオドアカジンスキーもIQが168もある天才らしくフィッツの嫌らしい行動原理(パトロール警官を10年もやっていた)が見透かされていたりします。

見どころとしてはこういった心理の読みあいもそうですが、なんといっても天下のFBIでもある意味杜撰な捜査をやっている点でしょうか。
上司の命令にはとりあえず従っとけ、分析官が現場に口出すなとか、FBIはプロファイリングを重視しているという勝手な思い込みがあったのですがそうでもないようですね。約20年くらいまえの話なので今はどうなのか分かりませんが。
フィッツの意見に従ったものの作戦が失敗し、フィッツはこう言われます。

率直に言おう。
お前はまだまだFBIで働ける。
それは才能があって特別だからではない。
今まで自分に関する問題は、自分が特殊だからと思ってきただろう。
自分がユニークな存在だとな。
だが違う。お前はただのバカだ。お前がここを去ったら我々は他のバカな奴を後任に呼ぶ。
だが誰もお前とそいつの違いなんか気づかない。
(フィッツは内規に違反してまで協力してくれた同僚をあっさりチクったりするちょっとサイコ的なところもあります笑)

さて、フィッツはユナボマーに自分は尊敬しているんだとかのたまいます。これは有罪を認めさせるための方便かと思いきや、どうやら本当にユナボマーに共感している様子。

山奥に引きこもって爆弾作って人を殺すような爆弾魔を尊敬するなんてありえない、と思うのが普通。しかし、ユナボマーが書いたとされる「産業社会とその未来」を少しだけ読んでみると、なるほど、妙に納得できる部分があります。
全文を読むことはできませんでしたが一部要約している記事がありましたのでリンクを貼っておきます。→http://nonono7.blog12.fc2.com/blog-entry-964.html
この記事にはユナボマーの文章に説得力は全く無いと書かれていますが、私は妙に納得してしまいました 笑

確かに原始時代のほうが一見すると自由のように見えるかもしれませんが、おそらくその時代では集団生活を維持していく上で各個人に役割が与えられていて、もしそれが全うできなければ集団から排除されていたとも考えられます。そういう意味では現代社会のほうが社会にまったく役に立たない人間でも(私の事ですか?)、生活保護もらってでも生きていけますので一概に原始時代のほうがいい、とも言えないような気はします。

ハーバードに飛び級で入学するほどの天才少年がどこをどう間違ったのか53歳になるまで童貞で山奥に引きこもって自給自足の生活をする。(人付き合いが苦手、人の考えている事や感情が分からないと告白していますのでアスペルガーかもしれません)

電気もない山小屋で今までの人生を回想する場面がありますが、ユナボマーことセオドア・カジンスキーはこう思います。
どうしてこうなった・・・(まだ捕まってない時です)
普通の人が愛する家族の為に費やす年月を爆弾づくりに費やしてしまった・・・どうしてこうなった・・・

どうしてこうなった・・・

若いころは不可能なんてなにもない。なんでもできるつもりでいたのに年をとるにつれ、自分の限界を知り、世の中不可能だらけに気付きあきらめが肝心だと知る。
どうしてこうなった・・・恵まれない環境のオッサンだったら誰しも同じ感情を抱いているかもしれません。
そうです。私がユナボマーが書いた産業社会とその未来にシンパシーを感じたのはこのせいだったのかもしれません笑

さて、フィッツは同僚を売り、捜査のために家族をないがしろにし、手柄は横取りされるという結構なお茶目さんです。

しかもユナボマーを追い詰めた捜索令状の根拠が法言語学による証拠であり、物的証拠でない点で令状の無効を申し立てられてしまいます。
序盤の話しの中心はこの言語解析で進みます。当時はまったく信ぴょう性のないものであったようですが差し詰め今ならAIによる解析でしょうか。
法言語学とか比較言語学がどんなに信頼のおけるものであったとしても、それだけで捜索令状が発布されてしまうのはやはり怖い気もしますね。心理学的に共通性があるから逮捕状発付されるとかどうでしょう?

現実のユナボマーは司法取引で有罪を認めて終身刑になったとウィキペディアには書かれていますが、この作品では事実かどうかは別にして単なる司法取引ではなかったとして描かれています。




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